地位をめぐるトラブル

  1. 宗教法人における地位をめぐりトラブルが生じた場合には、「自分が○○の地位にある」ことの確認を裁判所に対し求め、また、登記を整合させる必要があります。
  2. もっとも、宗教上の教義・信仰の内容については、信教の自由が憲法上保証されていますから、裁判所が「正しい」「正しくない」などと決めることはできません。一方、宗教上の教義・信仰にかかわりなく判断することができる事項(たとえば、解任に際し手続違反があったかなかったか)については、裁判所での判断になじみます。
    つまり、地位をめぐるトラブルの中には、(1)裁判所で判断ができるものと、(2)裁判所では判断できないものとに分けられることになります。
  3. 現在、裁判所において、宗教法人の地位をめぐる争いが生じた場合、裁判所での判断ができるかどうかの判断は、概ね以下のように整理されています。
    1. 「住職」のように、それ自体宗教上の地位に関する判断は、裁判所の判断になじまない
    2. 「代表役員」「責任役員」のように、世俗的地位の確認であっても、宗教上の教義・信仰の内容への判断を踏まえた上で結論を出さざるを得ない場合には、裁判所での判断になじまない
    3. 「代表役員」「責任役員」のような世俗上の地位の確認であり、かつ、争点が手続き違反の有無など、宗教上の教義・信仰の内容への判断を前提とする必要がない場合には、裁判所の判断になじむ
  4. そして、裁判所の判断になじむ上記(c.)の場合の典型例が、「被包括関係の廃止」に伴い地位を剥奪される場合です。この点に関しましては、「被包括関係の廃止」の項で詳しく述べます。