高次脳機能障害について

 交通事故や労災事故をきっかけに「家族の記憶力が悪くなった」、「事故に遭う前は出来ていたことができなくなった、時間がかかるようになった」、「人格が変わってしまったようだ」、そういった悩みを抱えておられる方は「高次脳機能障害」という言葉を耳にされたことがありますでしょうか。

 「高次脳機能障害」は、交通事故や脳卒中などで脳が損傷されることによって引き起こされる認知障害や行動障害および人格変化などを総称したものです。
 「高次脳機能障害」の原因については、交通事故等の外傷に起因する場合、主としてびまん性の脳損傷(頭蓋骨内の脳が外力によって回転させられ、ひずみが生じることによって脳全体に損傷が生じること)によるものと考えられています。

 外見的には頭部の損傷はなかった、あるいは頭部外傷はあったけれども治癒しており自宅で日常生活を送っておられるという方であっても、実は高次脳機能障害が残存しているということもあり、そのような方の場合、周囲から後遺障害が残存してしまったことに対する理解が得られにくく、事故前と同様に社会生活や職場に復帰できず苦労をされているというケースも少なくありません。
 また、周囲の理解が得られにくい分、事故前との変化に気付いているのはご家族だけという状況も多く、ご家族が大きな負担を強いられるとともに、将来に大きな不安を抱えておられるケースもあろうかと思います。

 交通事故、労災事故によって高次脳機能障害を発症されたケースでは、日常生活への不安を解消・軽減するために、適切な社会保障へアクセスしていただくことで必要な支援や負担軽減措置を受けていただくとともに、症状に応じた適切な後遺障害の等級認定を受け、それに基づく適切な賠償を受けていただくことが不可欠です。

 高次脳機能障害については、後遺障害として以下の等級が認定される可能性があります。

等級要件・症状労働能力喪失割合
別表第1
1級1号
神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの 100%
別表第1
2級1号
神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの 100%
別表第2
3級3号
神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの 100%
別表第2
5級2号
神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの 79%
別表第2
7級4号
神経系統の機能または精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの 56%
別表第2
9級10号
神経系統の機能または精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 35%

 高次脳機能障害の具体的症状としては、以下のようなものが指摘されています。事故後、ご自身又はご家族が以下のような症状でお悩みの場合は、高次脳機能障害の発症を疑い、早めにご相談をいただくことをお勧め致します。

  • 記憶・記銘力障害

    新しいことが覚えられない、すぐに忘れてしまう、思い出せない

  • 注意・集中力障害

    気が散りやすい、集中できない

  • 見当識障害

    自分がどこにいるのか、今日が何曜日かなどがわからなくなる

  • 空間無視

    視界の中に、見えなかったり見落としやすい空間がある

  • 遂行機能障害

    行動を計画して実行することができない、複数の作業を同時にこなすことができない

  • 行動障害

    周囲の状況を見て適切に振る舞うことができない、話の要点をまとめることができない、我慢することができない

  • 人格変化

    自発性の低下、衝動的になる、怒りやすくなる、自己中心的になる、病的に嫉妬する