個別の宗教法人(神社、寺院、教会)の多くは、上記のように、教派・宗派・教団などに属しています。宗教法人法の用語では、これら個別の神社・寺院・協会などを「被包括団体」と呼び、教派・宗派・教団などを「包括団体」と呼びます。
宗教法人法26条は、このような被包括関係を廃止するための方策を定めています。
手続の概略は以下の通りです。
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包括団体は、被包括関係を維持するため、さまざまな手段で、被包括関係の廃止を妨害することが予想されます。包括団体がその気になれば、被包括関係の廃止をもくろむ、住職など代表者の首を挿げ替えることは簡単です。
しかし、宗教法人法78条は、被包括関係を廃止しようとする被包括宗教法人に対して、不利益な取り扱いをすることを禁止しています。
つまり、被包括関係を廃止することは、被包括団体に法律上認められた正当な権利なのです。
それでは、上に述べました宗教法人法78条がある以上、被包括関係の廃止は何の問題もなくできるのか?そうではありません。
包括団体としては、「包括関係の廃止」を理由とする不利益な処分(住職の首の挿げ替え)ができないのであれば、それ以外の理由によって住職を解任してしまおうと画策するのです。
そこで争点となるのは、
です。
この点に関しましては、「専ら被包括関係の廃止を防ぐことを目的とした処分を行った場合はもちろん、仮に、他に理由がある場合であっても、被包括関係の廃止の企てがなかったのであれば当該処分がされなかったような場合についても、被包括関係の廃止を防ぐことを目的として処分がされたもの」(文部科学大臣採決平成16年9月24日)として、宗教法人法78条違反となると考えられます。
宗教法人法78条を理由に解任を無効とするためには、これらの点から、包括団体の行った解任が、「包括関係の廃止を目的」としていることを立証し、裁判所に適切に伝える必要があります。